先日お仕事で、かぎ針編み英分パターンのあみぐるみキットの翻訳をさせていただきました。よく見ると「MADE IN BRITAIN(イギリス製)」の文字が、、、。
かぎ針編みではアメリカとイギリスで同じ編み方でも表記が違うんですよね。この記事では、アメリカとイギリスでのかぎ針編みの表記の違いについて解説します。
基本の編み図記号 比較表
日本 | アメリカ(US) | イギリス(UK) |
くさり編み | ch (Chain) | ch (Chain) |
引き抜き編み | sl st (Slip Stitch) | sl st (Slip Stitch) |
細編み | sc (Single Crochet) | dc (Double Crochet) |
中長編み | hdc (Half Double Crochet) | htr (Half Treble Crochet) |
長編み | dc (Double Crochet) | tr (Treble Crochet) |
長々編み | tr (Treble Crochet) | dtr (Double Treble Crochet) |
三つ巻き長編み | dtr (Double Treble Crochet) | ttr (Triple Treble Crochet) |
例えばパターンに「dc6」と記載されていた場合、アメリカ式の場合は「長編み6目編む」となり、イギリス式の場合は「細編み6目編む」となって全く違う意味になります。
また、派生した編み方も同様で、「dc2tog」とあればアメリカ式は「長編み2目一度」、イギリス式は「細編み2目一度」、といった具合です。
この違いのことを忘れていて、編みながら「あれ?」となることも多いですよね。
アメリカ式かイギリス式かを見分ける方法は?
1.「Notion」など冒頭の注意書きを確認する
シンプルにどちらなのか書いてある場合がありますので確認します。
2.パターンの作者の出身地を確認する
オーストラリア人、イギリス人の作家さんのパターンはイギリス式、アメリカ人の作家さんのパターンはアメリカ式であることが多いです。その他の国では、アメリカ式が一般的だと感じますが、例外もあるかもしれません。
3.パターンに「sc」が登場するかどうか確認する
上記の表のとおり、イギリス式では「sc」に対応する編み方はありません。つまり、パターン上に「sc」が登場すればアメリカ式であることが分かります。
同様に、「htr」はイギリス式のみで使われる記号なので、「htr」が書かれていればイギリス式です。
4.その他の単語・表現を確認する
記号以外にも特徴的な表現があります。例えば以下のようなものです。
・目をとばす=miss a stitch(イギリス) = skip a stitch(アメリカ)
・ゲージ= gauge(イギリス) = tension(アメリカ)
ただし、私の感覚ですが必ずしも上記の通りではないです。実際に今回翻訳したイギリスのパターンでは、「ゲージ」は「tension」が使われていましたね、、、。
【余談】なんで違うの!?
そもそも何故こんなにもややこしいことになったのでしょうか?解説されている動画があったので紹介します(※英語ですが、アンティークの編み物の写真など出てきて見ているだけでも面白いです)。
この動画によると、違いの起源についてははっきりとは分かっていないが、1800年代から1900年代初頭にかけて、アメリカでもイギリスの表記が使われることがあったそうです。1800年代にはヨーロッパでかぎ針編みがさかんに行われていました。1800年代には産業革命による失業とジャガイモの飢饉などが重なって、ヨーロッパの多くの人々がアメリカに移住しました。それがアメリカでかぎ針編みが広がるきっかけになったようです。この時点では標準化された編み物記号はなく、奴隷のかぎ針編み職人たちは図案を見てレース編みを再現し、編み方は人から人へ口伝されていきました。
その後、パターンが様々な国で印刷販売されれるようになると、編み方の表記を各国で標準化する必要が出てきました。その中で、アメリカの出版社は今日アメリカ式として知られる表記を使用した一方で、イギリスではイギリス式の表記を使用し、それが広まったということです。
それぞれの用語がどのように名付けられたかというと、一説ではイギリスはかぎ針にかかっているループの数を指し、アメリカでは針を動かす回数を指しているとされています。
例えば、「細編み」は、前段の目に針を入れて糸を引き抜いたあと、針には2本のループがかかっており(2本なのでダブル、イギリス式のDouble crochet)、その後1回糸をかけて引き抜きます(1回なのでシングル、アメリカ式のSingle croghet)。
歴史を知るのも面白いですね!
記号に関しては、必要になったらその都度調べる方がよさそうです。
まとめ
アメリカ式とイギリス式のかぎ針編みの表記にはいくつかの違いがありますが、基本的な手の動かし方は共通しています。海外の編み図やパターンを読む際には、どちらの表記が使われているかを確認してみてください。この記事がそのヒントになれば幸いです!!